身近なものに対する疑問が研究の発端になるとはよく言ったものだが、自身の取り組む研究として相応しいテーマはそう簡単に見つかるものではない。 学部4回生としての研究に際して、そのテーマの採択ほど時間を要することは他になかったであろう。 長きに渡って悩み考えあぐねた末にようやく「スパゲッティ」という着想を得て、もうこれ以外に道(発想できること)はない...と思ったほどである。
ソフトウェアプログラムをスパゲッティにしてしまおう
ある先行研究[1] を師にご教示いただいたことでこの主題に至ったのだが、その経緯の詳説は後の章に譲るとして。 まずはソフトウェアプログラムのメタファ(隠喩表現)となる「スパゲッティ」の調査に奔走した。 日夜、数々のスパゲッティを食べ歩き、また調理し、その歴史や性質を徹底的に調べ上げた結果、私は「スパゲッティ」という食材が織り成す広大な世界を垣間見たのだ。 そんな私には、どうにも納得できないことが一つあった。
研究テーマの着想には、かつてのソフトウェア開発における問題でもあった「スパゲッティプログラム」という言葉が一役買ったのだが、様々な文献を当たってみると、その全てにおいて悪い意味(手のつけようのない複雑なプログラムという意味)で用いられていたのだ。 ピンからキリまである多様なスパゲッティを食してきた身として、「スパゲッティ」という言葉を一概に悪い意味で使っていることに対して腹立ちをも覚えたほど。 このことについて、本研究の中間発表で次のように述べたことがある。
世界中のイタリアンシェフを敵に回すような表現であり、言語道断である。プログラムと同様にスパゲッティにも良し悪しはあるのだ。
自分のことながらその荒ぶり方には少し呆れるが、この「スパゲッティへの情熱」こそが、本研究に取り組むための原動力となっていたことは相違ない。 かくして、スパゲッティとして可食化するための研究が進んでゆくのだが、その結末や如何に。上手く説明できていないが、関心や興味をお持ちいただけたとすれば幸いである。